センター長挨拶


センター長
小川 和洋

本研究センターは、1964年(昭和39年)に工学部附属材料強度研究施設として発足し、その後、破壊力学応用研究施設、破壊制御システム研究施設として発展し、国立大学法人化と同時にエネルギー安全科学国際研究センターヘの改組を経て、2014年に50年周年を迎えました。その年の9月に、「材料強度学」発祥の地である仙台において国際シンポジウムを開催し、2015年(平成27年)よリ、改めて材料強度の本質を見極め、安全かつ安心な機器の稼働を保証する強度信頼性設計評価に関する学術・研究基盤の構築を目指す「先端材料強度科学研究センター」として組織改編を行っておリます。

近年の先進構造物においては、高温、高圧、高速、高集積化、小型化、あるいは厳しい腐食環境といった極限環境下での使用が避けて通れず、材料や構造物に求められる要求も複雑化しています。このような経験のない複雑な事象の評価・予測を行うには、論理性と過去から現在までの経験が有用です。本研究センターは、2019年で設立55年を迎え、ごれまでの歴史の中で培ってきた多くの知見・経験を基に、新たな「材料強度科学」という学術研究分野の創成と実学として各種材料の強度信頼性設計評価技術の開発を推進しています。特に、上述のような極限環境下においては、これまで問題とならなかったナノスケールの組織変化や欠陥などの影響因子も顕在化することが考えられ、これらの評価に対応可能な研究部門を設置し、センター教職員・学生がー丸となって、問題解決のための研究を推進しています。

現在、研究部門としましては、エネルギー・環境材料強度信頼性科学研究部門、次世代エネルギーシステム研究部門、材料機能・信頼性設計評価研究部門、非破壊情報計測・評価研究部門、極限環境材料強度研究部門(客員部門)、電カエネルギー未来技術共同研究部門の6部門からなリ、ナノスケールからメガスケールにわたる広大な研究領域において材料物性の本質を解明する理学的視野に立った研究と構造健全性・信頼性を設計・評価する工学的な視野に立った研究を融合させ、材料強度科学学術体系の確立を進めています。また、材料強度評価から得られた機器・構造物の長期安全性・信頼性確保に関する知見を応用し、高効率燃料電池や太陽光発電等のエネルギー機器の開発や材料強度研究者から提案する高信顆性材料・構造物の開発も積極的に進めており、省エネルギーや環境保全に繋がる技術へと展開しておリます。

さらに、世界の材料強度研究教育拠点として、積極的な海外の研究機関との共同研究の展開と、学生交流、交換プログラムも推進しています。材料機能・性能の発現メカニズム、あるいは損傷メカニズムを原子レベルから科学的合理に基づき理解し、安定した機能や性能の制御方法を確立するとともに、稼働状態の構造・材料の健全性評価と破壊予知に基づく適切な修復方法等を統合的に研究開発し、将来のエネルギー供給基盤の設計に資する技術基盤の構築と具体的なソリューションの提案を目的として海外10ヶ国以上の研究機関と国際共同研究を推進しています。これらの機関と毎年国際シンポジウムを共催し、学生交流も活性化しています。

今後もこれまで以上に国内外の共同研究者と共に、人類社会の維持発展に資する、エネルギー機器、情報インフラ機器等の安全かつ安心な稼働に貢献する知の創成と有為な若者の継続的な輩出を進め、さらに研究の質を高めて材料強度科学研究拠点としての機能を果たせるように発展していきます。また社会の要請に応えるために学内外での連携を強化し、研究の社会還元を促進していく所存です。

最後に、これまで当研究センターの発展にご尽力頂いた多くの皆様に心より感謝申し上げますとともに、今後とも従前と同等以上のこ指導、こ支援を頂戴できましたら幸甚に存じます。

先端材料強度科学研究センター
センター長 小川 和洋